セントヘレナ島 - ケープタウン航路 4日目 / Voyage from St. Helena to Cape Town Day-4
船に乗って3泊もすれば、島影の1つや2つが現れても良いものだけど、この航海は甘くない、本日は360度海。それどころか明日も丸一日海の上だ。
昨日一昨日と難解な本を読んでいたのだけど、コンタクトの調子の悪さも相まって読んでも中身がサッパリ頭に入らず、集中もできず、ついに本物の馬鹿になってしまったか。と思ったけれど、コンタクトを取って目を休め、一先ず早寝すると、目の調子もいくぶんか回復し、いったん切り替えた小説の内容は、スルルと頭に入っていった。
ふぅ。難解な方をもう一度手にとって読み切れなかったらそれまでなんだけど。
船の上であと2泊して、ケープタウンで1泊し、機内2泊をすれば日本。海外への出国を完全停止する訳ではないけれど、今回の旅を最後に、日本にいる時間と海外に出ている時間は逆転するはず。長く日本を離れる回数は、今後極端に減ることになる。
そういう状況に久しぶりに戻る前に、何も考えずに馬鹿をしている今のうちに、同じ南大西洋に浮かぶトリスタンダクーニャの訪問を取りこぼしてしまったのが少し心残りだ。その島に一番近づいているのが、今日あたり。トリスタンダクーニャは、おそらく進行方向の真右?約90度に位置している。
ま、距離は2,000キロ位あって、船が面舵いっぱーい!と進行方向を変えたとしても、5泊程度は覚悟しなければいけないのだけど。。
本日は、昼にはテーブルテニスの大会、クイズ大会なんかが例によってあったのだけど、甲板や船室で本を読んだり荷物をまとめたり、洗濯をしているうちに晩ご飯の時間。
英国人3人に、セントヘレナ人、その旦那さんのチュニジア人に自分のテーブル。英国人でNZ在住のの女の子が元気溌剌で、船の中ではたいてい裸足で歩き回ってる。チュニジア人は誰かが見ているわけではないけれど、やはり酒や豚肉には手を出さない。英国人男性は「あ、今日のアペタイザも朝飯のリサイクルだ、ベーコンに卵にレタスに。。」と英国調。
ほぼ理解できていると思うけど、会話を膨らますような返しまでは至らない。リードするなんてのは以ての外の、差し詰めラリーが続かない卓球といったところ。食事の時だけでなく、他の乗客といくらでも話す機会があるのに、どうもこの航海では、気持ちが前のめりにならなかった。
日本にも来たことのある元気溌剌お姉ちゃんが、バターの包みを折り紙にし、パクパクモンスター?を作ってくれたので、もう少し手を加え、やっこ凧にしてのお返しはできたけど。そっから膨らまない。うーん。
晩ご飯の後はキャバレーパーティーなるものがあるようだけど、部屋で本を読んでパス。
そうだ、俺には大量に持ってきた本がまだまだ残っていると思い部屋に戻る。本を読みながら寝てしまえばいいや。で、なんとなくアマゾンの中古で買って、久しぶりに再読しようと思ったブコウスキーの小説を読み始めようとすると、表紙の裏から写真のコピーがハラリ。
小説の中身は、生まれてからずーっと、ひどいことばかりな少年ハンクが、自身のガッツで周りを打ちのめしたり、数えるほどしかいないけど親しくなった友人と楽しい時間を過ごしたりしつつ切り拓き、ほんの少しは女性にも相手にされるようになり。。ようやく童貞喪失やらで弾け、小説の幕は下りるのかるか。。。。。と思いきや、真珠湾攻撃を受けたアメリカの熱狂の中に、独り取り残され。その後の無頼な生活に続く。。。という長篇。本格的に無頼で酒と女に溺れる以前の、ブコウスキーのロックな自伝小説だ。短編もいいけど長篇もいいねぇ。
恐慌に襲われるアメリカ社会の姿なんかも垣間見られ、戦争勃発直後に強制移住、財産没収など、酷い扱いを受けた日系人社会と、同じ枢軸国ながら、ドイツ系のブコウスキーはアメリカ国内を気儘に放浪することさえかのうだった。。とを比較して考えたりするのも。。。という話はさておき。
で、なんだろこの写真のコピー。
剽軽な表情をした男性と二人の女性。背後のFAXやコピー機、女性の髪型からすると、二昔前な匂いがする。男性のニットとシャツ、ネクタイの組み合わせからは学校の先生、もしくは事務系公務員の類型そのままといった感じ。全般的な印象は、自分が社会人になったばかり頃、ちょっと上の先輩、少し前に大人の階段登っちゃった人達が、こんな感じだった気がする。
文庫版のこの本は初版で、出版が99年11月。
2000年問題で、使っているパソコンがそのまま動くかな?大丈夫かな?な頃。業務内容や会社によるだろうけど、パソコンがオフィスで一人一台になるのもう少し前の時代だと思う。
男性だけがちょっと離れた年上で、その次に真ん中の女性、左の女性が少ししたといったところかな。20年前の25,27,32歳位だろうか。その前提が正しいとすると、今は45,47,42歳位だろうか。
まあ、年齢はいい。
気になるのは、ちょっと照れた感じでカメラに目線を向けていない女性の結婚指輪と、男性の距離。それと、この写真のコピーがおられた状態で落ちてきて、そこで折ると3人の集合写真が、二人の写真になってしまうこと。で、その状態でこの本に挟まれていたこと。
右手の男性が既婚者の真ん中の女性に恋心を抱いており、それを知っている左の女性が、気を利かせ、
「三人で写真写真んー!」
なーんて言って、集合写真にしたのかなぁ。で、この男性が後日できあがった写真を大事にし、ブコウスキーのこの本を買った後、そのコピーをしおり代わりにしたのかな?
で、それだけでこの写真の話は終わりでなくて、左手の女性は女性で、男性に恋心を抱いていており、その女性は女性で別に写真をコピーし、今度は指輪を嵌めた女性のところを二つ折りにして。。。
なーんていう船の4日目。