青ヶ島 その1 / Aoga-shima (Blue Island) Vol.1
群青色は英語でultramarineだけれど、深い海から屹立した青ヶ島のような断崖絶壁の島は、たいてい濃い青、群青の海に囲まれている。透明度が高くて深い海に強烈な光が射すと、こんな色になるのだろうか?いや、黒潮が直接ぶつかる島だから、こんな色なのか他より濃い青なのだろうか。。
特別な事情がなければ、見上げるような島の絶壁は、容赦なく海の中まで落ち込んでいるはず。板子一枚下は(千尋)の地獄なんていうけれど、あっという間に海底が見えなくなってしまう岸壁に立って覗き込む方が、船に乗っている時なんかより、よっぽど恐ろしい。
さて、たどりついたぜ青ヶ島!その玄関口は、現在では島の唯一の海上アクセスとなっている青ヶ島/三宝港。港は、背後の断崖を固めて港のエリアをまず確保し、島から短い突堤を一本、自然地形の頼りない岬を造作して確保した船だまりが一つといった全容。
港の沖合には防波堤のようなものは一切ない。沖合に防波堤を作る事が不可能か、可能でも島のサイズに見合ったインフラ整備でないのだろうと思う。H鋼を打ち込んでも、嵐になって、波濤を受けると、飴のようにひん曲げられてしまうと言う。それでも負けじと、港湾整備は粛々と進められている様子。その場所にいると、大型機材でぎゃんぎゃんやっているようだけれど、大海原と島の絶壁と比較すると、ニンゲンの営みというのは頼りないというかささやかというか。。。クライマーがポータリッジ(絶壁テント泊/休憩)する写真をなんとなく思い出す。
離島というのは、管理人とその家族、メンテナンス業者しか住んでいないマンションのような状況になってしまいがち。人口170人程度の島に大型クレーン車があるが、人口15万ちょいの東村山に90台の大型クレーンがあるだろうか?
いや、意外とあったりするかもね。。
島で感じたインフラ過多や、建設事業者の多さ云々はこのあと一切書かない事にする。そもそも、青ヶ島と対照的な東村山のような、街の景色を30〜40年ごとにゴッソリかえてしまう郊外型スクラップアンドビルドな都市で生き死にする人、更に更に対照的な東京の世田谷のような、超過密で便利だか便利でないのか分からないような街で暮らす人、そして島に住む人。どちらがバランスが取れているかどうかなんて誰も判断できないのだから。
「隣の芝は青く見える」というのは、「隣の芝は黄色であって欲しい」なんだから。そういったギャップみたいなモノが最終的にアートや文学、ピープルズパワーに旅心に繋がるのだから。。
おっと、話がそれた。。
さて、そそくさと積み降ろし、積み込み作業を終えた還住丸が島を去ってゆき、宅配便、ゆうパック/郵便、販売用商品、事業用資材、作業用車への作業員の皆様も港に横付けされた軽バンや箱バンに積み込み、迎え入れられてゆくと港は急に静かになる。
さて、キャンプ場まで歩きますか。。。なんて、相棒と気合いを入れていると。。。
「キャンプかい?乗ってく?」
とのお声がけ。心のどこかで「お声がけ」を期待していた厚かましさや、安堵などが入り交じった気持ちになるが、声をかけてくれた方(お仕事中なので、特定は避けます)の「入港出港が終われば、特に何もないからさ」なオーラの発散にいくらか気持ちが楽になる。
車に荷物を詰め込み、港から延びる道を上がってゆくとすぐにトンネルになる。
そして、トンネルを出る。
船からのアクセスで島に渡った人は、三宝港からのトンネルを抜け、顔を上げた瞬間が、島一番のクライマックスになるかもしれない。トンネルを抜けた先は青ヶ島カルデラの内部になる。300メートルオーバーのギンギンの崖に囲まれたカルデラ内は、ジャングルの奥地に迷い込んだようで、群青の海に囲まれた島にいることを忘れてしまう。
トンネルから青ヶ島内部にアクセスすると、排水管を伝わって、水抜き栓から浴槽に出て来たような感じと表現しても、決して大げさではないと思う。
程なくキャンプ場に到着。ささっと荷物を下ろして放置。
再度、車に乗り込んで島の景色に感嘆したり、どんな生活を送っているのかズケズケと質問していると、これまたなかなか見かける事のない、つづらな道がカルデラの崖上に向かって見える。崖の直下に辿り着くき、張り付くようにギアを落とした軽自動車はでうなりを上げながら上ってゆく。